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中小企業診断士とは?

企業が抱える問題の相談役である「中小企業診断士」という資格をご存じでしょうか?

中小企業診断士は、主に経営のコンサルティングを行う職業ですが、
「経営のプロといえばMBA」とも聞くことから、両者の違いを知りたいと考えている方もいるかもしれません。

ここでは、中小企業診断士とはどんな仕事をする人なのか、MBAとの違いとあわせて解説します。
中小企業診断士を活用した事例や、依頼する際の費用相場、選び方まで紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次
  1. 経営コンサルタントの国家資格「中小企業診断士」
  2. 「経営課題解決のプロ」中小企業診断士の仕事とは?
  3. 中小企業診断士とMBAの違いとは?
  4. 事例紹介|中小企業診断士の活用方法とは?
  5. 中小企業診断士によるコンサルティングの費用相場
  6. 中小企業診断士選びは「専門性」と「コミュ力」の2つに注目
  7. まとめ

1. 経営コンサルタントの国家資格「中小企業診断士」

中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に関する診断や助言を行う専門家です。
国家資格として、中小企業支援法に基づき経済産業大臣が登録します。

中小企業診断士制度は、中小企業を営む人が適切な経営診断や経営に関する助言を受けたいと考えたときに、
一定のレベル以上の能力を持った人を見極めるために設けられた制度です。

中小企業基本法では、「中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者」と定義され、
中小企業診断士は、「公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント」と位置づけられています。

2. 「経営課題解決のプロ」中小企業診断士の仕事とは?

中小企業診断士は業務独占資格ではないことから、
弁護士や会計士のように特定の業務に特化した仕事をするわけではありません。

中小企業支援法では、中小企業診断士の業務は「経営の診断および経営に関する助言」とされています。
そのため、企業より経営コンサルティングを依頼された中小企業診断士は、企業の現状を分析し、
成長戦略の策定について、専門的知識に基づいたアドバイスをすることになります。

また策定した成長戦略を実行するための具体的な経営計画を立て、実行後の結果や実績を分析し、
さらにその後の経営環境の変化を踏まえた支援を行うまでが中小企業診断士の仕事です。

このように中小企業診断士は、事業を俯瞰的な観点から検証し、
総合的かつ現実的に経営課題の解決を図る「経営戦略のスペシャリスト」なのです。

3. 中小企業診断士とMBAの違いとは?

「経営のスペシャリスト」といえば、「MBA」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

MBAはMaster of Business Administrationの頭文字を取った言葉で、日本では経営学修士を指します。

修士とは大学院を卒業した人が得られる学位のことで、
MBAを取得するには大学院で経営学を1~2年程度学ぶ必要があります。

中小企業診断士とMBAは、資格の有無が異なります。
中小企業診断士は中小企業支援法に基づく国家資格ですが、MBAは資格ではありません。

また学習内容についても、中小企業診断士が「中小企業の経営企画や戦略立案の支援」といった
コンサルタント的位置づけを目指すものであるのに対し、
MBAは「経営者として経営戦略の意思決定ができるようになる」といった、
自ら経営に携わる立場を目指すものとなっています。

中小企業診断士とMBAでは、いってみれば監督やコーチとプレイヤーの違いがあります。
経営支援、つまりサポートを依頼するなら、中小企業診断士を見つけるのが適切です。

4. 事例紹介|中小企業診断士の活用方法とは?

それではここからは、実際に中小企業診断士を活用した事例を3つ紹介していきます。
中小企業診断士に依頼することで、どのようなことが実現できるのかを見てみましょう。

(1)3事業を並行展開している企業が「業務プロセスとIT導入」で成功した事例

① 事業内容

自社ブランドの油圧機器事業をはじめ、板金加工、福祉機器の受託開発など性格の異なる3事業を並行して行っている、
下請け型からの脱却を図り自力で営業活動を行う独立指向型の企業です。

② 経営課題

下請け型からの脱却を図るためにオーダーメイド事業に取り組み始めたものの、
営業管理や生産管理が複雑化し混乱を生じていました。

とくに、「業務が属人化している」「データの共有化ができていない」
「3都市に分かれた事業拠点間でのコミュニケーションが難しい」の3つが経営課題として挙げられました。

③ 解決方法

まずは業務プロセスを改善するために、管理者、実務者が参加する形で業務フロー図を作成し、
複雑化した業務全体を「見える化」しました。

そしてITツールを活用し、業務フローの背後で利用されているデータがどのように流れているのかを分析したうえで、
バラバラになっていた企業内データの流れの整流化に成功。

事業所間のデータ連携はクラウド型ツールを用いることで課題を解決し、
業務の属人化については過去データを蓄積して検索する仕組みを構築しました。

④ 結果

定量的には支援開始から5年後に、売上高156%を達成しています。
経常利益についても、▲2千万から+2千万と大幅な経営改善が図られました。

定性的には自立的な組織風土が醸成され、
またシステムの自社開発を担える技術系の若手人材が育つなどの結果が報告されています。

(2)「ソリューション販売」への転換で成功したオーダー枕販売店の事例

① 事業内容

掛け布団や敷き布団などの一般的な寝具を販売していた老舗寝具販売店が、量販店との競争から脱するために、
新たに「オーダー枕」の販売をはじめた事例です。

② 経営課題

オーダー枕の販売を始めたものの、「オーダー枕の認知が低く来客数が増えない」「ネット販売も思うように伸びない」
「広告費や販促コストの負担が大きい」の3つの課題を抱えていました。

③ 解決方法

競合分析や自社商品分析など各種分析を行うことで診断を進め、枕という「モノを売る」事業から、
眠りの悩みを解決する「ソリューションを売る」方針へと転換を図ります。

枕だけではなく、掛け布団やマットレスの組み合わせを変えることで「快適な寝心地」を販売するとしました。

そのうえで、商品自体は仕入れ商品であるため競合には勝てないと判断し、
ネット販売は縮小して実店舗での販売に特化させます。

一方販促は高額な新聞広告から、自店舗のある地名をキーワードに取り入れたWeb広告を主に活用しました。

④ 結果

寝具そのものが欲しい顧客ではなく、
眠りに悩みを抱える潜在顧客をターゲットにしたWebマーケティングを実施することで、
定性的には3年後の売上高144%、経常利益は156%を達成。
定性的効果としては、「眠りの悩みを解決する店」としてのブランド定着に成功しています。

(3)「地中熱利用の住宅」を高齢者に提供することで成功した工務店の事例

① 事業内容

新築住宅を主軸に、リフォーム事業や入札工事の下請けも行う工務店です。
設計に関しては外注を活用し、自社では施工からアフターケアまでを一括管理しています。

② 経営課題

ほかの工務店と比較して特筆すべき特徴がないため、新築住宅においても価格競争になりがちでした。
可処分所得が低い割合が多い土地柄、顧客が低価格な住宅を選択する傾向にあることも関与していました。

③ 解決方法

付加価値のある住宅を実現するために、再生可能エネルギーのなかでも「地中熱」に目をつけました。

大手住宅メーカーでは高額になる地中熱を活用する住宅を低価格でできる方法を模索し、
オリジナルの地中熱住宅構造を構築。

独自の強みを手に入れました。

④ 結果

1年間に受注する新築住宅の約半数を地中熱利用住宅が占めるようになり、
厳しい市場環境のなか口コミでの受注を受けるまでになりました。

新築工事出来高も、2年間で30%増加しています。

5. 中小企業診断士によるコンサルティングの費用相場

それでは中小企業診断士に実際に依頼するには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

診断士に業務を依頼した際に発生する費用の相場を、中小企業診断士協会が公表している平均額をもとに、
業務の内容とあわせて紹介していきます。

(1)診断業務

費用相場:1日あたり10.5万円

診断業務は中小企業診断士の中心業務にあたります。
現在の企業の経営状態を、財務面や事業内容などさまざまな確度から分析します。
現状を把握したのちに、経営上の課題を抽出するのが診断業務の内容です。

(2)経営指導

費用相場:1日あたり11.0万円

経営診断で洗い出した課題を、今後どのように解決するのかを考え、
改善案や経営戦略を立案するのが経営指導の内容です。

(3)講演・教育訓練

費用相場:1件あたり12.5万円

中小企業診断士は、経営に関する幅広い知識を有していることから、
主に経営者を対象とした多人数向けの講演を依頼できます。

また人材育成のための能力開発計画を作成することもあります。

(4)顧問料

費用相場:1カ月あたり17.0万円

継続して経営指導を受けたいときには、中小企業診断士と顧問契約が可能です。
期間は1カ月単位での契約となるのが一般的です。

契約内容により回数は異なりますが、月に数回定期的に企業を訪問し、
財務分析や経営戦略などのコンサルティング業務を行います。

6. 中小企業診断士選びは「専門性」と「コミュ力」の2つに注目

中小企業診断士を選ぶときには、「専門性」と「コミュニケーション力」の2つに注目して選ぶことがポイントです。
どういったことなのか、それぞれ詳しく解説します。

(1)自社の課題を専門とする人を選ぶ

中小企業診断士は、経営企画・戦略立案、販促・マーケティング、人事労務管理、財務、情報化・IT化、生産管理など、
企業経営についての幅広い知識を有していることが特徴です。

中小企業診断士はすべての分野に対して一定レベルの知識があり、
そのなかで「得意とする専門分野」を1つか2つ持っているのが一般的です。

そのため診断士にコンサルティングを依頼するときには、
会社が抱える問題にそった専門分野を持つ人を探すことが大切です。

例えば、今の時代にあわせてECサイトを開きたいと考えるなら、
IT化やWebマーケティングに強い中小企業診断士に依頼する必要があります。

診断士としての経歴の長さだけで判断するのではなく、
Webマーケティングに長けた診断士の専門性を重視したほうが、的確なアドバイスができる可能性もあります。

このように、自社が中小企業診断士に期待する役割を明らかにしたうえで、
その分野をとくに得意としている人を見つけ、ミスマッチを防ぐことが大切です。

(2)コミュニケーション力のある人を選ぶ

中小企業診断士は、総合的な観点から課題を見つけるために、
問題解決の糸口を人とのコミュニケーションからつかむことも少なくありません。

企業の経営者や従業員の話を聞きながら、現場が抱える課題を洗い出していくのです。

そのため診断士がコミュニケーション能力に欠けていると、現場からうまく話を吸い上げることができず、
問題の根本的な原因を明らかにできない可能性が高くなります。

診断士を選ぶときには、短時間で信頼関係を築き、「この人になら本音で話せる」と思える人が理想的です。

また事業の課題が明らかになり、解決策を模索していくなかではその内容をわかりやすく説明できるかも重要です。
誰しもが診断士と同様の知識があるわけではないため、専門的な内容を理解できるように説明する必要があります。
そのためには相手の理解度を適切に測り、相手にあわせてコミュニケーションする能力が求められます。

上から目線ではなく、同じ位置に立ち、コミュニケーションを取りながら、
事業の課題解決に向けて伴走してくれる中小企業診断士を選びましょう。

まとめ

中小企業診断士は、中小企業の経営上の課題を洗い出し、戦略を策定して経営者とともに解決を図る役割を果たします。

中小企業診断士に依頼するには1日あたり10万を超える費用が発生するため、慎重に人選を進める必要があります。

診断士はそれぞれ得意な専門分野を持っているので、自社が何に課題を抱えているのかをある程度にでも明らかにし、
その分野を専門とする診断士を選ぶことがミスマッチを防ぐポイントです。

そしてコミュニケーションを取りやすく、課題解決に向けて一緒に汗をかいてくれる人を見つけましょう。