採用コスト削減|お金をかけない採用を実現するには?
企業にとって「コストの最適化」は、経営状況に関わらず、企業の利益を上げるために必要なことといえます。
不必要な経費を削減するために、さまざまな取り組みにチャレンジしている企業も多いでしょう。
そんな経費削減の有効な項目のひとつが、「採用コストの見直し」です。
もちろん採用を実施していなければ、それらにかかる費用は発生しません。
しかし近年、ほとんどの企業が人材不足を感じており、
毎年一定の予算を組んで求人広告や採用活動を行っているのが一般的です。
そうなると、企業にとっては、優秀な人材をいかに低コストで採用するかが重要になります。
そこでここでは「採用コスト削減」のポイントや、
「お金をかけない採用」を実現するための手法について解説していきます。
目次
1. 新卒・中途の3人に1人が「3年以内」に辞める
採用コスト削減について考えていく前に、現状の離職率をしっかりと見つめていく必要があります。
2020年10月に厚生労働省が公表した「新規学卒者の離職状況」データによると、
新卒者の3年以内の離職率は、「大卒で32.8%」「短大卒で43.0%」です。
現状では、新卒社員の3人に1人が3年以内に退職してしまっているのです。
ちなみに1年目の新卒社員が退職した場合、企業の損失額は、
採用や教育にかかるコスト、再採用コストなどを含め約500万円ともいわれています。
また、3年以内の離職率が高さは、新卒者だけではありません。
実は「中途採用者もおよそ30%」が3年以内に退職しています。
せっかく優秀な人材を獲得できたとしても、わずか3年以内で失ってしまっては、
その分の採用に費やした時間とコストは「有効な資源配分」とはいえないでしょう。
また、退職者が増えると、単純に採用コストが増えるだけでなく、企業のイメージダウンにもつながってしまいます。
さらに離職率が高いと世間からはブラック企業と見られる傾向もあり、
コスト面だけでなくブランド面でも企業は不利益を被ることになるのです。
こうなると悪循環に陥り、新卒者がその企業への就職活動を回避するようになりますので、
より優秀な人材を集めにくくなります。
現実に、平均30%の採用者が3年以内に退職していくわけですから、
その分の採用活動を行わなければならないというのは避けられないところです。
採用コスト削減のためには、優秀な人材の効率的な採用だけではなく、
いかに採用後の早期離職を防ぐ企業の工夫や努力が必要ということがおわかりいただけるかと思います。
2. 採用コストとは?新卒・中途の1人当たりの採用費用
次に、採用コストの内訳と1人当たりの採用コストについてお伝えしていきます。
家計簿と同じで、どこにどれだけの費用がかかっているのかを明確にしていくことで、
優先して削減できる項目も見えてきます。
(1)採用コストとは?
採用コストとは、「企業が社員を採用するためにかける費用」のことです。
計算方法は、「採用コストの総額÷採用人数」になります。
ですから同じ金額を費やしても、採用人数が多ければ1人当たりの採用コストは下がりますし、
採用人数が少なければ上がります。
大企業に比べて、中小企業の採用コストが高めになるのはそういった要因があります。
(2)新卒・中途の平均採用コスト
2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査によると、新卒者採用にかけた総額は
1社平均557.9万円(上場企業1783.9万円、非上場企業375.1万円)で、
1人当たりの採用コストは全体で平均48万円(上場企業45.6万円、非上場企業48.4万円)となっています。
また、中途採用については、マイナビ中途採用状況調査2020年版によると、
予算の平均が831.9万円で実績は674.1万円です。
ただし、首都圏の実績は940万円以上になっているなど地域差があること、
さらに金融・IT・不動産関連の中途採用が高めの採用コストになっており、
業種によっても1人当たりの費用は大きく異なっています。
ちなみに、採用コストの内訳については、
大きなところで人材紹介にかけるコストが平均294.5万円、求人広告費が平均144.4万円、
そのほか、合同説明費が平均73.4万円となっています。
採用活動だけのコストを考えると、新卒よりも中途のほうが、多くのコストを費やしていることがわかります。
(3)採用コストは「内部」と「外部」の2種類
採用にかける費用は、人材紹介会社へ支払う報酬額(目安は採用者の年収の3割)や
求人広告費などが大部分を占めていますが、そのほかにもさまざまな項目があり、
大きく「内部コスト」と「外部コスト」に分かれています。
内部コストは、主に「採用に関わる社員の人件費」と「社員の育成に関わる社員の人件費」の2つとなります。
表面上見えにくいコストですが、採用活動が行われている間や新卒社員が会社の戦力となるまでの間は、
日常業務の業務効率や生産性はどうしても低下してしまいます。
採用までに時間がかかればかかるほど、
また、離職率が高ければ高いほど、実は内部コストが膨らんでいることになるのです。
一方で、外部コストは
「人材紹介サービスへの報酬、求人広告費、会社説明会の会場費やパンフレットの制作費用」といったもので、
採用コスト全体の大部分を占めています。
効果的な採用コスト削減のためには、この外部コストの見直しも重要になってくるのです。
3. 採用コストを下げるための施策とは?
それではどのような工夫をすれば、採用の質を保ちつつ、コストを削減することができるのでしょうか?
採用コスト削減には大きく分けて3つの方法がありますのでご紹介していきます。
(1)「アルムナイ」「リファラル」採用の活用
現在、大企業を中心に注目され、積極的に導入されている採用方法が「アルムナイ採用」と「リファラル採用」です。
どちらも採用コストを削減できるだけでなく、即戦力の人材を確保できるというメリットがあります。
アルムナイ採用は、「一度退職した社員の再採用」のことです。
以前働いていたわけですから、仕事の知識や経験があります。
育成面のコストを確実に軽減できますし、実績もあり、社風や人間関係においても理解度が高いので、
即戦力としてかなり期待ができます。
ただし、一度退職した社員を受け入れるための態勢作りが必要ですので、
アルムナイ採用の研修などを社内で実施してその理解を浸透させておくことが大切です。
また、リファラル採用は、「社員による紹介制度」のことです。
従業員300人以上の規模の企業では75.2%が導入済みで、その66%ほどが金銭面のインセンティブを支給しています。
現役社員の引き抜きですから、
実績や人脈豊富で、転職市場にいない貴重な人材を採用できるというメリットがあります。
紹介した社員を通じて社内の雰囲気や仕事の流れなど伝わっているので、環境にも馴染みやすいでしょう。
(2)面接や内定の辞退率を下げる
採用方法だけでなく、採用面接や内定の辞退率を下げることでも採用コストを削減することが可能です。
辞退率を下げる施策として、実際に採用現場で効果のあったものを5つ挙げます。
- 応募があり次第すぐに返信する
- 無断キャンセルを減らすため、面接前日に確認の連絡を入れる
- 面接日程(または面接場所)を複数提示する
- (遠方の場合)交通費を支給する
- 応募者が聞きたい内容を事前に受け付ける
これらの施策は、いずれも応募者を尊重した対応であることがわかります。
面接は、企業側が一緒に働きたいと思える人材かどうかを見極める場ではありますが、
同時に応募者がここで働きたいと思えるかを見極める場でもあることを認識しておくことが大切です。
(3)ミスマッチによる早期離職を防ぐ
実際に働き始めてから、業務内容や職場環境に対して「こんなはずではなかった…」という理想とのギャップで、
早期に退職するケースも多く見られます。
このようなミスマッチを防ぐ方法として、採用者に現実の職場環境や仕事内容をしっかりと伝えておくことが大切です。
そのためには、「採用サイト」を工夫し、求職者が知りたい情報を提示しておくと効果的です。
先輩社員へのインタビュー、1日の業務の流れ、習得できるスキルや資格、福利厚生の紹介、
またよくある質問への回答などを採用サイトに盛り込み、求職者のためのコンテンツを充実させるようにしましょう。
また、選考とは関係なく、会社見学や一緒に働く人たちとの交流の機会を設けることで、
会社の雰囲気を肌で感じてもらい、イメージの相違による離職を防止する方法もあります。
4. 40代・50代の中途採用者を雇用するメリット
次に、新卒者ではなく、40代や50代の人材を中途採用にて雇用する際のメリットをご紹介します。
メリットのひとつが離職率の違いです。
全体としては新卒採用者と中途採用者の3年以内の離職率は30%ほどで変わりませんが、
中小企業以下の企業規模に絞ってみると、実は中途採用者に方が平均しておよそ15%離職率が低い結果が出ています。
採用活動時のコストに関しても、アルムナイ採用やリファラル採用などで中途採用を行った場合は、
大幅にコストを削減できるということになります。
とくにアルムナイ採用やリファラル採用では、経験豊富な人材を獲得できるため、
新卒者と比較して育成期間が短く、育成コストの削減が可能です。
会社にとっては即戦力であることから、成果の点でも大いに期待できるところです。
つまり、アルムナイ採用やリファラル採用であれば、高額な人材紹介サービスや求人広告に費やすコストを削減しつつ、
育成コストも削減でき、離職する可能性も低いために全体として大幅採用コスト削減が可能になるということです。
まとめ
採用活動は、必ずしも高額なコストを避けられないというわけではありません。
改めて内部コスト、外部コストの項目を確認し、
効果の上がらない取り組みは思い切って打ち切ってみるのもひとつの方法です。
ぜひこれまでの自社の採用方法とその効果を分析し、仕組みを見直すきっかけにしてみてください。