補助金・助成金に「頼る」経営では成功しない
補助金や助成金は、要件を満たして採択されると、返済義務のない事業資金を得られます。
起業や新規事業の展開を計画し、活用を検討されている事業主の方も多いでしょう。
しかし、補助金や助成金に頼って事業を運営し続けるのは、企業の本来あるべき姿ではありません。
ここでは、補助金や助成金に頼ることなく事業を成功させるために知っておきたい、
経営戦略策定のポイントを紹介します。
目次
1. 補助金・助成金はあくまで挑戦への足がかりと考える
起業したい、事業を拡張したいと考えたとき、補助金や助成金は心強い存在です。
とくに起業に際しては、「事業に対する明確なビジョンはあるのに資金がない」のは最初に越えるべき壁になります。
経営実績がないと、金融機関から融資を引き出すのは難しいためです。
そんなとき、返済義務のない補助金や助成金は心強い存在です。
事業を成功させる足がかりに、大いに活用したい資金です。
ただし、補助金や助成金は、あくまで
「事業計画はあるものの、初期投資などの資金面がネックになり計画をスタートできない」
といった企業を助けるためのものです。
あくまで短期的なサポートであり、中長期の利益は、もちろん事業の成功により得ていかなければなりません。
根本として、確かな経営戦略があってこそ、事業は成功するのです。
補助金や助成金はあくまでも足がかりと捉え、頼らなくても黒字になる計画を立てていなければ、
いずれ事業は失敗に終わってしまいます。
今計画している事業が、
「補助金がなくてもやるという強い意志がある」「助成金がなくても黒字化できる」ものなのか、
精査することが大切です。
2. 事業を成功へと導く経営戦略策定のポイント5つ
事業を成功させるために経営戦略を策定するときには、押さえておくべきポイントが5つあるので解説します。
(1)顧客のニーズに合った商品・サービスですか?
計画している事業が、ターゲットとする顧客のニーズに合った商品やサービスであるかは重要なポイントです。
どんな事業も、生み出した商品やサービスを購入してくれる相手がいなければ成り立ちません。
自分がどれだけ素晴らしいと思って作ったものでも、「買いたい」と思う人がいなければ利益を上げられないためです。
想定顧客がどのような課題を抱えているのかを掘り下げて考え、
課題解決に繋がる商品やサービスに近づけていきましょう。
(2)競合する事業・サービスはありますか?
商品やサービスを販売するにあたり、同じ市場で同じ顧客をターゲットとしている競合がいないかの調査も必要です。
競合する事業やサービスがある場合には、競合の特徴を洗い出し、それらと比較した自社事業の優位性を示します。
競合に勝る点がなければ顧客に選ばれることはなく、事業としての成功はあり得ないためです。
自社の強みや優位性は、必ず客観的に示すことが重要です。
たとえば「腕のいいシェフが創作するフレンチをゆとりある空間で提供」としては、客観的とはいえません。
「腕がいい」も「ゆとりある」も主観であり、誰しもが納得する理由ではないためです。
これが「フランスの三つ星レストラン○○で5年間働き、フランス料理コンテストXXで
最優秀賞を受賞したシェフを採用。座席は一般的な店舗が1坪あたり1.5~2席であるのに対し、
1席のみとしてゆとりある空間とした」とすれば客観性は高まります。
自社商品やサービスの強み、競合優位性を述べるときには、客観性を意識しましょう。
(3)経営資源をどう配分するかは決まっていますか?
事業に不可欠な経営資源をどのように配分するのかを考えることも、事業の成功には欠かせません。
経営資源とは、会社が利用できる資産のことで、主に以下の3つを指します。
- ヒト(人):会社で働く従業員
- モノ(物):製品や設備・備品など会社で所有する物理的な物
- カネ(金):経営資金
これら3つの経営資源は、事業運営には必須の要素ですが有限です。
経営資源に制限があるなか事業を成功させるには、収益化できる可能性が高い「競合に勝てる」計画を優先し、
経営資源を集中投下して取り組む必要があります。
もし複数の市場に参入する場合には、人材をどう配置するか、予算をどう配分するかなどを
慎重に考えなければなりません。
まずは手持ちの経営資源を明らかにしましょう。
そして事業計画に合わせ、それぞれが「いつ」「どれくらい」必要になるのか、
また「どのように」調達するのかを時間軸で検討することが大切です。
(4)事業計画に維持・改善のプロセスは入っていますか?
どれだけ万全の計画を立てていても、事業が必ずしも順調に成長し続けるとは限りません。
もちろん売上は伸び続けていくべきで、結果的には右肩上がりを目指す必要があります。
しかし、たとえば「最近調子がいいから、今後の成長率は毎期5%と見込んで計画しよう」とするのは
根拠がありません。
売上予測は市場や環境の変化によって、停滞と伸長を繰り返すのが普通です。
事業計画は、より現実的なものにする必要があります。
そのためには最終的に成長率をプラスに保つために、
具体的にどのようなプロセスを経るのかを予想することが必要です。
たとえば、投入した新製品は、いつまでも同じように売れ続けるとは限りません。
成長曲線が水平になってくる時期を予測し、その時期にどう資金繰りし、
どのような行動を起こすのかまで計画に盛り込んでおくとよいでしょう。
そのうえで事業計画は定期的に見直し、右肩上がりの状態を維持できるよう、改善していくことが大切です。
(5)企業理念に即した事業・戦略ですか?
最後に経営戦略を立てるうえでもっとも重要なことをお伝えします。
計画している事業や戦略は、企業理念に則したものでなければなりません。
企業理念とは、自社がどのような使命を持ち、どうやって社会に貢献するかを宣言するものです。
企業理念は企業が存続する限りあり続け、経営が苦しくなったときや、重要な経営判断をするときに、
立ち返るよりどころでもあります。
企業の目的は利益を上げることですが、
根本には「お金を払ってくれる顧客の役に立つ商品やサービスを提供したい」という信念があるはずです。
事業を起こした原動力となったその信念に沿わないような計画が、うまくいくことはありません。
事業計画や経営戦略を立てるときには、これからしようとしていることが、
そもそも自社の企業理念に沿ったものなのか、あらためて考えてみてください。
3. 事例紹介!イノベーションは「既存」への疑問から始まる
なんとか事業を始めても、継続するのは簡単なことではありません。
企業が生き残るには規模の大小に関わらず、
商品やサービス、モノや仕組みへのイノベーションを継続することが必要です。
次々とイノベーションを起こして成功している企業のひとつが、
サブスクリプション型動画配信サービスの先駆者Netflix(ネットフリックス)です。
従来、家で動画を観るためには、店までDVDをレンタルしに行くのが当たり前でした。
しかし顧客には、「店に行く手間を省いて動画を観たい」というニーズがありました。
そのニーズをいち早く捉えたNetflixは、まずDVDの翌日郵送サービスを開始し大成功を収めます。
やがてインターネット環境が向上してデバイスが普及すると、好調だったDVD配送サービスをあっさり放棄します。
「観たいと思ったときにすぐに観たい」というニーズを満たすため、オンラインでの動画配信サービスを始めたのです。
月額料金を払えば、「いつでもどこでも好きなだけ」動画を観られる、
しかも不要になればいつでも解約できるサブスクリプション型ビジネスモデルは、従来の商習慣を覆すものでした。
Netflixは、常に顧客のニーズが何かを考え続けることで、世界を巻き込むほどのイノベーションを起こしたのです。
そして今では、全世界で2億人を超えるユーザーを抱える大企業へと成長しました。
「既存のモノやサービス」は、必ずしも完成形ではありません。
顧客の声に耳を傾ければどんなものでもイノベーションのヒントが見つかることを、
Netflixの成功は教えてくれています。
まとめ
補助金や助成金は企業をサポートする心強い存在ですが、それらがなくては成り立たない事業はうまくいきません。
あくまでも足がかりと考え、なくても事業を継続できるような経営戦略を策定する必要があります。
そのためには、ほかの店や企業では手に入らないような商品やサービスを提供し続けることが大切です。
顧客の声に耳を傾け続け、イノベーションのヒントを見つけましょう。