助金・助成金申請の採択率を高める方法とは?
補助金や助成金への応募を考えているものの、数が多くて迷ってはいないでしょうか。
あるいはとにかく申請さえすれば、どれかが採択されると考えてはいませんか?
補助金や助成金は、公的資金が投じられる事業であるため、審査は厳格に行われます。
当然、要件を満たす事業が対象のため、
やみくもに申請したからといって、採択の確率が上がるというものではありません。
むしろ、かけた時間が無駄になってしまう可能性が高いでしょう。
ここでは、補助金や助成金申請をする際はどこへ相談すればいいのか、
またどうすれば採択率を高められるのかを詳しく解説します。
目次
1. 補助金と助成金は違うの?
補助金と助成金は言葉が似ているので、なんとなく同じものと理解している人が少なくありません。
しかし実際は、両者はまったく別のものです。
まずは補助金と助成金の違いを表で確認してみましょう。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
交付元 | 国(経済産業省)や地方自治体 | 国(厚生労働省)や地方自治体 |
目的 | 雇用に関するものが一般的 | 経済や地域の活性化 |
返済義務 | なし | なし |
受給条件 | 予算上限があり、要件を満たしても受給できない可能性がある | 要件を満たしていれば受給できる可能性が高い |
申請期間 | 基本的に年1回、数週間~1カ月程度 | 随時、あるいは長期間 |
このように、支給元の官公庁に違いはあるものの、
国や地方自治体が主体となって行われる公的事業である点は共通しています。
一方、助成金は要件を満たしていれば受給できるのに対し、
補助金は予算があるため、要件に合致していても採択されない可能性があることが大きな相違点です。
どちらも受給できれば返済義務がないため、事業にマッチした補助金や助成金があれば、
積極的に応募してみるのがおすすめです。
2. 補助金・助成金は誰に相談できるの?
補助金や助成金は、非常に種類が多いことが特徴です。
補助金や助成金は、どちらも自由に申請できます。
しかし補助金は、応募要件に合っていなければ、当然、採択の可能性はありません。
申し込むにはさまざまな書類を作成する必要があり、相応の手間がかかります。
受給見込みのないものに応募しても、無駄骨になってしまうでしょう。
そのため応募するなら、自社の事業がどの補助金の要件に合致しているのか、
つまり、どの補助金や助成金に申し込むのが一番採択の可能性が高いのかを判断する必要があります。
しかし多くの補助金事業のなかから、自社に合ったものを見つけるのはそう簡単なことではありません。
また、いざ申請となっても準備する書類が煩雑なうえ、制度内容も毎年変わるため、
その都度最新の情報を調査する必要があります。
もちろん書類作成から申請までを、すべて自分で行うことも可能です。
ただ、不採択となった事例の多くが、「そもそも補助金の要件を満たしていない」
あるいは「書類の不備や事業計画書の内容不足」であることは見落とせない事実です。
採択の可能性を高めたいのであれば、プロによる支援を活用するほうが賢明といえるでしょう。
それでは具体的な相談先をご紹介します。
(1)商工会議所
補助金や助成金の相談先としてまず思い浮かぶのは、商工会議所や商工会ではないでしょうか。
商工会議所と商工会は、どちらも経済産業省の管轄下にある組織ですが、
商工会議所が原則として市の区域、商工会が町村区域を管轄している点が異なります。
商工会議所も商工会も、経営指導員が経営に関する相談を無料で行っており、
補助金や助成金についても相談が可能です。
事業の内容に合った補助金や助成金を提案してくれたり、必要な書類を一緒に確認してくれたりします。
ただし、商工会議所や商工会で相談を受けるには、会員になる必要があります。
会費は月々数百円から数千円で、補助金含む経営相談を無料で受けられる、
確定申告のサポートを受けられるなどがメリットです。
商工会議所や商工会独自の補助金制度を設けているところもあるので、入会を検討してみてもよいでしょう。
(2)よろず支援拠点
よろず支援拠点とは、国(経済産業省)が全国に設置している中小企業・小規模事業者のための経営相談所です。
経営上のあらゆる困りごとを、何度でも無料で相談できます。
各都道府県に1箇所ずつあり、面談を申し込むとさまざまな経歴や分野の専門家が相談に応じてくれます。
もちろん補助金や助成金に関する質問や相談もできるので、利用を検討してみるとよいでしょう。
(3)取引先の金融機関
銀行などの金融機関でも、
各種補助金や公的支援の情報提供をしてくれたり相談に乗ってくれたりするところがあります。
そういった支援に力を入れている金融機関を取引先として選び、日ごろから良好な関係を築いておくと、
いざというときに心強いサポーターとなってもらえます。
ただし場合によっては、銀行が連携する外部の専門家(税理士や中小企業診断士)を紹介されることがあります。
外部専門家を活用するケースでは、相談料などの費用が発生するのが一般的です。
その場合、専門家に自身で直接依頼したほうが割安になることもあるため注意しましょう。
(4)会計士・税理士
補助金や助成金に関しては、会計士や税理士にも相談できます。
補助金や助成金に返済義務はありませんが、銀行の融資と同様に、
事業計画の将来性や、健全な経営計画を明確に数字で示すことのできる企業にしか支給されません。
さらに補助金や助成金は、支援される内容の費用を支払ったあとに支給されるのが一般的です。
つまりはいったん費用を自己負担することになるのです。
そのため、受給までの資金繰りについても考えておく必要があり、
会計士や税理士といった財務のプロの目で書類を作成してもらうのは、高い効果が見込めます。
(5)中小企業診断士
補助金や助成金の相談は、中小企業診断士に依頼するのもおすすめです。
会計士や税理士は、財務のプロではありますが、経営のプロではありません。
補助金などの申請においては、自社の分析や事業の将来性は加点項目として重視されるため、
しっかりアピールすることが大切です。
事業計画書や経営計画書についても、経営に関する総合的な知識を備えた中小企業診断士なら、
精度の高い書類を作成してもらえることが期待できます。
また多くの補助金は、国の中小企業施策によるものです。
中小企業施策を専門分野とする中小企業診断士に依頼することで、
審査時の加点ポイントをきっちり押さえた書類にできるでしょう。
3. 補助金・助成金申請の採択率を高める方法
補助金や助成金申請の採択率を高めるためには、押さえておくべきポイントが5つあります。
それぞれ解説していきます。
(1)制度内容をしっかりと把握する
補助金や助成金は、毎年同じものが募集されているように見えますが、要件も毎年同じとは限りません。
基本的なことですが、制度の内容は最新のものを確認し、自社の事業が要件を満たすかを見極めることが大切です。
実際応募したものの、そもそも要件にあっていない、書類に不備があるといった単純な理由で
不採択となるケースは決して少なくありません。
「必要な要件はすべて満たしているか」「必要書類は準備可能か」の2点をしっかりと把握してから、
申請準備へと進みましょう。
(2)補助金成果事例から採択傾向を学ぶ
補助金に関しては、過去の採択結果のほとんどをホームページなどで確認できます。
実際に採択されたのはどのような事業内容なのかがわかれば、
その補助金で採択されやすい事業の傾向を把握できるかもしれません。
以下に成果事例を確認できる、代表的な補助金事業を3つ紹介します。
① もの補助成果事例検索
「ものづくり補助事業」は、
生産性向上と経営革新を目的とした設備投資費用などが対象となる中小企業向けの補助金です。
https://www.monodukuri-hojo.jp/TopPage.aspx
② ITツール活用事例
「IT導入補助金」は、自社の課題解決に向けてITツールを導入しようとする中小企業に対し、
導入経費の一部を補助する制度です。
https://www.it-hojo.jp/applicant/casestudies.html
③ 小規模事業者持続化補助金採択者一覧
「小規模事業者持続化補助金」は、
小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組む際の経費の一部を支援する制度です。
活用事例は、以下の2つのサイトで検索できます。
- 全国商工会連合会
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_t/#saitaku - 日本商工会議所
https://www.r2corona.jizokukahojokin.info/corona/index.php/saitaku/
(3)加点項目を押さえた書類作成
多くの補助金は、提出された申請書や各種書類の内容に応じて審査が実施され、
審査結果は「申請書の内容+加点項目」によるポイントで決まるのが一般的です。
つまり、申請書がどれだけ素晴らしくても、加点項目でポイントを稼げなければ採択されない可能性があります。
たとえば、最大1,000万円の補助金を受給でき、
採択率も40~50%と高いことから人気の「ものづくり補助金」では、
以下のような4つの「加点項目」が明記されています。
加点項目 | 内容 |
---|---|
1.成長性加点 | 有効な期間の経営革新計画の承認を取得している |
2.政策加点 | 創業・第二創業後間もない(5年以内) |
3.災害等加点 | 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得している |
4.賃上げ加点等 | ① 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、地域別賃金+60円以上の水準にする計画を策定している。または、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を策定している ② 被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業で、制度改革に先立って任意適用に取り組んでいる |
最大5項目について加点され、エビデンスとして提出する添付書類はそれぞれ最大4点で加点されます。
多くの企業が申請するなか、採択されるためには加点項目を押さえた書類を作り、
しかも高得点を目指さなければなりません。
そのために書類の作成に関しては、中小企業診断士といったプロに依頼するのが無難です。
(4)客観的な視点による事業計画
事業計画は、客観的な視点で立てることも重要です。
事業計画では、事業内容や企業の戦略、収支の見込みなどを計画書にまとめます。
補助金や助成金を受けるには、どのような事業をしていて、どれだけ成長の見込みがあるかを訴えなければなりません。
補助金などは公金が使われるうえ、返済も不要となるためその点はよりシビアです。
しかし自身で計画を立てると、つい見込みが甘くなりがちです。
売上予測や利益額に関しては、どのようにしてその数字を出したのか、論理的な根拠を示す必要があります。
厳しい目で審査されることを考えると、プロの手を借りて客観的な視点で事業計画を立ててもらうほうがよいでしょう。
(5)実績のある中小企業診断士に依頼する
補助金や助成金の申請サポートは、経営のプロである中小企業診断士に依頼するのがおすすめです。
中小企業診断士に依頼すると、以下のメリットが得られます。
- 全国で3,000件を超えるともいわれる補助金公募のなかから、一番採択の可能性が高い補助金の提案
- 経営のプロでもある第三者視点による精度の高い事業計画書
- 加点ポイントを押さえた書類作成が可能
補助金や助成金は国や自治体の政策であり、公金を投じることから、要件にそった事業者にしか支給されないものです。
当たり前のことですが、この前提を理解せず、
「申し込めば受給できる」「数打てばどれかに当たる」と考える人が実は少なくありません。
しかしここまでご説明してきたとおり、提案が採択されるためには自社の事業にもっとも適した補助金や助成金を選び、
ポイントを押さえた書類作りが非常に重要になります。
プロである中小企業診断士に依頼すればその点の心配は不要になることは、十分なメリットといえるでしょう。
また中小企業診断士は、常に補助金や助成金に関する最新の情報を把握しているため、
まだ広く知られていない制度を紹介してもらえるかもしれません。
ほかにも審査において面接やプレゼンを求められる場合もありますが、
そのようなときでもサポートを得て、事前に周到な準備ができることもポイントです。
なお補助金情報は「ミラサポplus」https://mirasapo-plus.go.jp/ で確認できます。
登録しておくと情報が届くので、活用してみてください。
4. 中小企業診断士による支援の流れと手数料の相場とは?
それでは実際に、中小企業診断士に支援を依頼した際の流れと、気になる手数料の相場を紹介します。
(1)支援の流れ
まず、支援方法に関しては、申請書作成に必要な情報をヒアリングする面談が中心になります。
面談の回数は、応募する補助金や助成金によって異なりますが、3回以上必要になるのが一般的です。
現在は、対面ではなくオンラインでの面談も行っています。
必要な書類の提示や経営者にしか考えられないことを考えてもらい、
事業計画書に記載が必要な事項のまとめなどのサポートを実施します。
補助金申請や助成金申請においては、
基本的に事業者が支援を得てかなえたいと思っていることを実現するお手伝いのため、
中小企業診断士が経営について指導することはありません。
補助金申請や助成金申請の支援は、基本的に申請書提出までとなります。
しかし採択後も煩雑な書類作成が必要なこともあるため、採択後も支援を希望される場合は、
顧問契約を検討されるのもひとつの手です。
(2)手数料の相場
補助金や助成金の申請支援の手数料は、受給できる金額によって異なります。
たとえばものづくり補助金や事業再構築といった支給額が高額な補助金の申請をする場合は、
成功報酬となるのが一般的です。
手付金に10万~20万円支払い、採択された場合、その10~20%を報酬とするイメージです。
小規模な補助金の場合には、ケースバイケースですが、
成功報酬なしで5万~20万円程度を見込んでおくといいでしょう。
ただし中小企業診断士によっては、顧問契約している企業しか支援を行わないこともある点には注意が必要です。
まとめ
補助金や助成金は、国や地方自治体が主体となって実施する公的事業です。
返済の義務がないため、要件を満たすものがあれば積極的に活用しましょう。
しかし補助金は公金を投じることから、簡単に採択されるものではありません。
受給するにはしっかりとした事業計画を立て、加点項目を押さえた書類作りが非常に重要です。
商工会議所などの無料相談もありますが、経営のプロである中小企業診断士にサポートを依頼すれば、
より精度の高い書類作りが可能になります。
とくに競争率の高い補助金を申請するなら、
プロの視点に立った論理的な事業計画を立ててもらうことをおすすめします。