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「問題社員」のトリセツ

(本記事は『帝国ニュース千葉県版(2020年11月16日号)』に寄稿した記事「「有害社員」の取り扱い方法」を加筆修正したものです。)

「問題社員がいるのですが、辞めさせることもできず困っています。どうすればよいでしょうか?」

先日、ある経営者からこんな相談を受けました。詳しく聞いてみると、その問題社員は、仕事はできるが言われたことしかせず、会社の方針や経営者に対して批判的で、協調性がなく、周囲に不満をまき散らし、他の社員に悪影響を与えている、とのことでした。

このような特徴を示す従業員は「問題社員」だと感じられるでしょう。

こうした問題社員は「有害社員(=Toxic Worker)」と呼ばれ、一緒に働く従業員に悪影響を与えることから、放置しておくと思わぬ損害を被ることになりますので、対策を考えたいところです。

■「有害社員」の毒性の強さ


「有害社員」については、米国のディラン・マイナーとマイケル・ハウスマンが研究をしています。
その研究によると、

  • 生産性が高く協調性もある「スーパー社員(=Superstar Worker)」は周りに好影響(生産性向上)を与える
  • 「有害社員」は、その2倍の悪影響(生産性低下)を与える

ということが報告されています。つまり、

  • 1人の「有害社員」の悪影響を相殺するために、2人の「スーパー社員」が犠牲になる

ということなのです。最悪の場合、「スーパー社員」が辞めてしまうことさえあります。

このような「有害社員」は採用時に排除したいところですが、人手不足にある中小企業では難しいのではないでしょう。では「有害社員」を雇ってしまったら、どのように取り扱えば悪影響を抑えることができるのでしょうか。

■ コミュニケーションで「有害社員」を変える

よく言われる通り「人を変える」ことはできません。しかし、「人は変わる」ことができるのです。

人が変わるためには “気づき” が必要なのですが、「有害社員」には “気づき” がないのです。そこで、コミュニケーションによって「有害社員」に “気づき” を与え、変わるきっかけを作ることが肝要なのです。

タイプ別コミュニケーション

人のタイプは3つに分かれます。

  • 自己成長モデル
  • 現状維持モデル
  • 保護モデル

適切なコミュニケーションは以下のようにタイプによって異なります。

【自己成長モデル】
“気づき”があり、変化できる。自分で課題を見つけて成長することができる。
→ コーチング、プレッシャー

【現状維持モデル】
“気づき”はあるが、変化が苦手で現状にとどまっている。
→ カウンセリング、傾聴

【保護モデル】
“気づき”がないので変化もしない。利己的。
→ カウンセリング、ねぎらい

例えば、企業での導入が増えているコーチングですが、効果があるのは「自己成長モデル」に対してのみで、実は「現状維持モデル」と「保護モデル」に対しては効果がないのです。
効果のないタイプにまでコーチングをするのは時間(とお金)の無駄ですね。

では、ここで問題としている「有害社員」のタイプはどれにあたるでしょうか?

「有害社員」は「保護モデル」に分類されます。

上記に示した通り「保護モデル」に有効なコミュニケーションはカウンセリングです。
そして、カウンセリングの中で「ねぎらい」の言葉をかけていくことが肝なのです。「ねぎらい」の言葉によって、「有害社員」は“気づき”を得るようになり、“気づき”を得たことで言動が変化し、毒性が弱くなっていくのです!

しかし、有効なコミュニケーション手法がわかっても、問題である「有害社員」に対して、「ねぎらい」の言葉をかけるのは、心情的に難しい部分もあるかもしれません。優秀な社員であればいくらでも「ねぎらい」の言葉が出てくるかもしれませんが、問題社員に関しては、そもそも労えるようなことをしていない可能性も高いでしょう。

■ 仕組みで「有害社員」を変える!

実は、“気づき”の他にもう一つ、人が変わるきっかけがあります。

それは環境の変化です。

働く環境を変化させると「有害社員」も変わります。

具体的にどのように変えるかというと、個人の成果よりも、チームや会社への貢献、同僚や部下の成長への寄与に対する行動を評価する仕組み(人事制度)を導入します。
会社の発展と社員の利益を一致させることで、「有害社員」の利己的な行動も、会社や他の社員の利益になり、毒が毒でなくなるのです。

しかも、働く環境を変化させることは、有害でない社員にも効果があります。

社員のモチベーションを高め、自立や成長を促すことができるため、人材開発にも有用なのです。

人材は差別化の最終手段であり、企業の成長には必要不可欠です。

「有害社員」がいなくても、『人が育つ仕組み』を取り入れてみてはいかがでしょうか。