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パワハラ防止対策してますか?
(本記事は『帝国ニュース千葉県版(2021年9月6日号)』に寄稿した記事を加筆修正したものです。)
「え、そんなこともパワハラになるんですか・・・?!」
2022年4月1日から、全事業主にパワーハラスメント(以下、パワハラ)防止対策が義務化されました。パワハラ防止対策の一つに「ハラスメント問題に対する労働者の関心と理解を深めること」があり、義務化に先駆けて対応を始めている中小企業では、研修による啓発活動に取り組んでいます。冒頭のセリフは、パワハラ研修を受けた管理職の方から聞かれた声です。
■ パワハラ防止法とは?
2019年に公布された「改正労働施策総合推進法」において、職場でのハラスメントに関する部分が改正され、パワハラについても防止措置が新たに義務付けられることになりました。この新たな義務を「パワハラ防止法」と呼んでいます。パワハラ防止対策は2020年6月からの義務化でしたが、中小事業主には猶予期間が設けられていたため、全面義務化は2022年4月からとなりました。対策には時間を要することもありますので、万が一、対応できていない場合は早めに取り組みましょう。
■ パワハラとは?3つの要素と6つの類型
パワハラに該当するかどうかの判断基準として、指針※で3つの要素が示されており、3つすべてを満たす場合にパワハラと認められます。また、代表的なパワハラ言動の類型として6種類が挙げられています。これらの言動がすべてパワハラになるわけではなく、個別の事案について総合的に判断することになります。もちろん、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導であれば、パワハラには該当しません。
※「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
パワハラ3要素
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
パワハラ言動6類型
- 身体的な攻撃:暴行・傷害
- 精神的な攻撃:脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり仕事を与えない
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入る
■ 企業が取り組むべきこと
事業主がパワハラ防止のために講ずべき措置(義務)は以下の通りです。中小事業者にとっては対応が難しいものもあるので、専門家の力を借りることをお勧めします。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
パワハラの内容とパワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、厳正な対処方針・対処内容を就業規則等の文書に規定する - 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を設置し、相談窓口担当者が適切に対応できるようにする - 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
パワハラ事案発生時に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者および行為者に対する措置を適正に行い、再発防止に向けた措置を講ずる - そのほか併せて講ずべき措置
相談者・行為者等のプライバシー保護と、相談等することで不利益な扱いをしない旨を定め、労働者に周知・啓発する。
パワハラ対応の難しいところは、業務上の指導が絡むことではないでしょうか。よかれと思って行った指導が、行き過ぎによりパワハラとなってしまうことがあります。冒頭のセリフにあるように、知らないうちにパワハラに該当する言動を行っていることもあります。パワハラ防止に必要なのは、経営者や指導する立場にある人たちの意識改革です。ハラスメント問題を理解し、コミュニケーション手法を変えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
■ パワハラ対策を経営に活かす!
ハラスメントに関する取り組みや対策については、就業規則に規定を追加することをお勧めします。パワハラだけでなく、セクハラ、マタハラなど、ハラスメントに対する自社の対応方針を明確化して就業規則で示すことは、働く従業員の安心感につながります。
また、就業規則の改定は、社内環境を見直し、会社のルールを見直す良い機会となります。ルールがないというだけで、トラブルに発展することもあります。時代の変化に対応し、労使トラブルを防ぐためにも、定期的な就業規則の見直しを実施することは、経営管理上も有効な取り組みといえます。
会社と従業員がWin-Winの関係を築き、業績を向上させるため、こうした法令等の改正をうまく活用していきましょう。