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企業を成長させる人事評価制度の作り方とは?

バブルの崩壊とともに、日本の伝統的な年功序列制度もその価値を失い、
成果主義の人事評価を導入した企業は少なくないでしょう。

しかし、なかには評価制度への社員の不平不満から業績までもが悪化し、苦悩している企業も多く存在します。

人事評価がうまくいっていないのには、どのような理由があるのでしょうか。
また適切な人事評価を行うには、何に気をつければいいのでしょうか。

ここでは、人事評価制度の好循環により企業を成長させたい方に向けて、
評価を行う際に気をつけるべきポイントや制度導入のメリット、良い制度を作るときの基本などを解説していきます。

目次
  1. 企業と社員の成長や生産性に関わる評価制度
  2. 目標管理=人事評価にしていませんか?
  3. 目標管理制度(MBO)は決して悪い制度ではない
  4. 年功序列を前提とした評価基準
  5. 評価制度がないデメリットや会社の特徴
  6. 評価制度を導入するメリット
  7. 良い評価制度の基本4つ
  8. 自社独自の評価制度を作る際のポイント
  9. まとめ

1. 企業と社員の成長や生産性に関わる評価制度

人事評価制度とは、社員の能力や企業への貢献度をもとに評価を行い、処遇に反映させる制度です。

社員にとっては、昇給や昇格に影響を与え、自分が会社にとってどのような存在であるのか、
会社にどう評価されているのかを確認できる大事なイベントになります。

また企業にとっては、人件費やポジションなど、
コスト・人材という大切な経営資源をどう配分するかに関わる重要な制度です。

「人事評価」は社員の幸福度や生産性にも深く関係してくるため、結果的には企業の成長にも大きく影響を与えます。

2. 目標管理=人事評価にしていませんか?

人事評価でありがちなのが、「目標管理=人事評価」とはきちがえてしまうことです。
これはとくに成果主義の人事評価を行う企業に多く見られる傾向です。

そもそも目標管理は、組織と個人の目標をリンクさせ、
社員が上司から押しつけられるのではなく自主的に目標を設定することで、
能動的に仕事に取り組み、より大きな成果を出すための仕組みです。

日本では、バブル崩壊後の経営再建のため、多くの企業がこれまでの年功序列の人事制度を見直し、
業績を向上させる成果主義へとシフトしました。

そして、成果主義を実現させる方法のひとつとして注目されるようになったのが、「目標管理制度」です。
つまり目標管理は、もともとマネジメントの手法であって、人事評価の手法ではないのです。

しかし多くの日本企業は、社員に目標を設定させ、
達成したかを管理・評価するといった誤った目的で目標管理を運用しています。

「目標管理=人事評価」としてしまうデメリットはさまざまあり、以下のような問題が発生し始めます。

  • 社員は達成できる目標しか立てなくなり、挑戦しなくなる
  • 人事評価で好成績を得るために個人主義が蔓延する
  • 個人主義が社風となり、チームワークが低下する

さらには、目標到達までのプロセスを重視しなくなり、
「結果さえ出せばいい」と考えるようになる社風においては、離職率も上がってしまうでしょう。

その結果、企業全体のパフォーマンスや生産性は低下していくのです。

3. 目標管理制度(MBO)は決して悪い制度ではない

目標管理制度(Management By Objective)は、
先にお伝えしたように、そもそも人事評価のための制度ではありません。

しかし、企業を成長させるためのマネジメント手法として、正しく運用できれば、企業の成功に高い効果を発揮します。

目標管理制度を成功させ、企業の成長に結びつけるには、以下のようなポイントがあります。

(1)目標基準が具体的である

目標管理制度においては、目標基準が具体的でなければなりません。
何をもって「目標を達成した」とみなすのかがあいまいだと、評価基準が不透明になり、
評価者によって結果が違ってしまう可能性も高くなります。

たとえば「質の良いサービスを提供する」「英語力を高めるよう努力する」といった目標は、具体的ではありません。
あくまで、その努力の結果、どうなっている状態を目指すのかの基準を明確にしておきます。
「顧客満足度10%増」「契約件数前年比10%増」「TOEIC800点獲得」といった数値的な指標を示すことがベストです。

さらに契約件数10%が目標であるなら、達成率に対して
「9~10%=A」「7~8%=B」「5~6%=C」「3~4%=D」「0~3%=E」と、
会社側の評価基準も明確にしておくことも大切です。

(2)期間を設定する

目標管理制度では、期間を設定することも大切です。
期限がなければ目標達成へのモチベーションを保つことは難しく、現実味は薄れてしまいます。
ゴールの見えないマラソンを、走り続けられる人はそれほど多くありません。

また企業側にとっても、期間が設定されていなければ、評価が難しくなってしまいます。

(3)目標レベルが現実的である

目標の設定は、現実的なものであることも重要です。
たとえば「前期の100倍売り上げる」といった、非現実的な目標は避けましょう。
かといって、低すぎる目標設定では、社員も企業も成長は見込めません。

今できる範囲、今あるリソースのみで達成できる結果ではなく、
これまでのやり方を見直し、工夫・改善することで見込める成長を考慮した目標を設定しましょう。

(4)取り組み方が明確である

設定した目標にどう取り組めばいいのかも、明確であることが大切です。

たとえば「前期よりも売上を10%増やす」とした場合、
「それに向けて何をするのか」を明らかにしておくということです。

「営業の電話を1日10本かける」
「既存客に週1回メールを送りコミュニケーションを取る」など、
どのようなアクションを取るのかが明確に言えないようなら、
何をすればいいかわからないまま期限が過ぎてしまいます。

ここでも「がんばる」ことが目標とならないように注意しましょう。

(5)自身の役割や強みと関連がある

目標管理制度では、設定する個人目標は社員自身の役割や強みと関連があることも大切です。

目標管理制度が企業を成長させるためのマネジメント手法であることを考えると、
「目標を達成すること=企業の成長に繋がること」であるべきです。

たとえば「TOEIC800点を目指す」とした社員が、英語とはまったく関わりのない部署であるなら
目標として設定するのには違和感があります。

目標達成することが、企業に貢献するかといった視点で目標を設定するようにしましょう。

4. 年功序列を前提とした評価基準

日本では長い間、年齢や勤務年数に応じて役職や給与を決める「年功序列型賃金制度」が主流でした。

「年功」とは「年齢による功績」です。
つまり、長年勤めた社員はそれだけ功績や功労があり、経験やスキルが備わっている、との考え方に基づいています。

年功序列制度は、年齢や勤続年数の長さに応じて役職が上がり、昇給していくため、人事評価基準が明確でした。
しかし必ずしも、「長年勤めた社員はそれだけ功績や功労がある」とは言えないことが問題です。

社員の実際の実績や貢献度に関係なく昇給させていくと、
人件費が増大するにも関わらず、業績は伸びなくなってしまうためです。

また、エスカレーター式の一律昇給は、社員が次第に努力する必要を感じなくなります。

「目標を達成して評価されたい」といったポジティブで能動的な考えを持ちにくく、
企業の成長が鈍化してしまうのです。

5. 評価制度がないデメリットや会社の特徴

企業として成長できない、人が定着しないといった悩みを抱える企業のなかには、
評価制度がないところも少なくありません。

評価制度のない企業には、以下のような特徴やデメリットがあります。

(1)生産性が下がる

仕事への評価がなければ、社員は「がんばっても同じ」と感じてモチベーションが上がらず、
当然、生産性は低くなります。

企業側としても、何か問題が発生したり、社員が仕事で手を抜いたりしたとしても、
評価システムがなければ指摘して改善を求める機会がありません。

(2)人間関係が悪くなる

評価制度がないと、部下と上司の関係性が悪化する恐れがあります。
上司が自分の仕事ぶりを見て評価してくれる実感がないと、信頼関係を築きにくくなるためです。

また、昇進・昇格の基準の不透明さや不満は、必ずと言っていいほど人間関係を悪化させてしまいます。

(3)人材が流出しやすい

人事評価がない企業は、人材が流出しやすいことも特徴です。

評価制度がなければ、どのようなスキルを磨き、
どのような貢献をすれば次のステージへと進めるのかが社員にはわかりません。

努力の方向性がわからなければ、がんばる意味を見いだせなくなってしまいます。
そうすると、自分を正当に評価してくれると思われる企業へと流出する可能性が高くなるのです。

6. 評価制度を導入するメリット

評価制度がなければ、生産性が下がる、人間関係が悪化するといったデメリットがあることがわかりました。

ここからは反対に、評価制度の導入で得られるメリットを5つ紹介します。

(1)社員のモチベーションが高まる

公正な評価基準に基づいて適切に評価されることは、
自分の仕事が会社に認められた証拠となり、社員のモチベーションの向上に繋がります。

がんばり次第で正当に評価される会社であるとわかれば、企業に対するエンゲージメントが高まり、
業績に貢献する人材に育つことが期待できます。

(2)適切な人事考課が行える

適切な評価ができるようになると、公正な人事考課も実現します。

評価はされるものの、それが報酬などの処遇に反映されなければ、社員の幸福度は上がりません。
単に評価されるだけではなく、それが実際に昇給や昇進といった目に見える形で企業から還元されることで、
社員の満足度が上がり業績に反映されていくのです。

(3)自発的に行動できる能力の開発

自身の働きを会社が適切に評価してくれることがわかると、
社員は受け身の姿勢から脱却し、より自発的に行動しはじめます。

一生懸命働いても評価される仕組みがなく、どれだけがんばっても会社に認めてもらえないのであれば、
社員はただ与えられた仕事とノルマをこなすだけになりがちです。

努力の結果が正当に評価されるようになると、社員はより前向きに業務に取り組むようになります。

(4)人材育成による企業の業績向上

人事評価は、確かに昇給や昇進の材料であり、もちろん評価の結果をそれらに反映させるのは重要なことです。
ただし、人事評価の真の目的は、「人材育成」による「業績向上」にあります。

正しい人事評価制度は、社員の自発性やモチベーションを上げるだけでなく、社員の長所と短所を明確にします。
適性をつかむことで、より効果的な人材の配置ができるようになるのです。
適材適所の人事配置は社員にやりがいを与えるだけではなく、会社の業績向上にも繋がります。

(5)優秀な社員の離職を防ぐ

適切に評価する仕組みが社内で整備されると、社員の人事に対する不満が減少します。
どのようにがんばればどう評価されるのかが明確になれば、キャリアアップの道筋が立てやすくなり、
優秀な人材が他社に流出しにくくなることもメリットです。

7. 良い評価制度の基本4つ

良い評価制度を整えるには、以下の4つの基本を押さえておく必要があります。

(1)評価は「育成」が目的である

まず前提として、評価や考課は結果として給与や昇格に繋がりますが、
目的は社員の能動性の向上や人材育成のための基準であるという認識を持つことが大切です。

評価制度がなく、がんばったところで会社から評価されることがなければ、社員はがんばる意味を見いだせません。
その結果、ただ与えられた仕事を粛々とこなす、指示待ち人間になりがちです。

何をどう努力すれば評価されるのかを明確にすることで、
社員のモチベーションは向上し、能動的に働くようになるのです。

(2) 業務に見合った明確な評価基準

部署ごとの業務に見合った明確な評価基準を設けましょう。
「公正な評価」を重んじるあまり、どの部署でも同じ基準を設けるのはかえって公正さを損ないます。

たとえば営業部門と管理部門では、評価の基準は違って当然です。
一律に同じ基準で評価しようとするのではなく、業務に見合った基準を設けることが大切です。

(3)評価基準は定期的に見直す

評価基準はいったん作れば終わりではなく、経営課題や経営戦略の見直しと同時に
自社の現状にあったものへと最適化していくことも必要です。

たとえば初めての人事評価では、
他社の成功事例をまねた制度でスタートしてみるという企業は決して少なくありません。
また導入したものの基準が明確でない場合などは、かえって社員のモチベーションを下げてしまうケースもあります。

評価基準は、実際に運用しながら、
自社にあったもの・社員の納得感が得られるものへと積極的に変更していくようにしましょう。

(4)多面的な評価で公平性を保つ

人事評価では、多面的な評価で公平性を保つことも重要です。

人事評価の大きな問題のひとつとして、
評価する側の人間(評価者)が評価するトレーニングを受けていないことが挙げられます。

とくに年功序列企業が成果主義へと脱却した場合には、評価者自身に評価された経験がなく、
適切に評価できないことは珍しくありません。

そのため、評価者の主観や意向が色濃く評価に反映されてしまい、部署内の不満に繋がることがあります。

人事評価においては、誰が評価しても同じ結果になる基準と仕組みを作ると同時に、複数人で評価する、
あるいは上司や人事以外の、同僚や部下などあらゆる立場から評価する360度評価を取り入れることなどを
検討しましょう。

8. 自社独自の評価制度を作る際のポイント

それでは最後に、自社独自の評価制度を作る際のポイントを6つ紹介します。

(1)社員の意見を評価基準に反映

適切に運用されれば社員のモチベーションを高め、会社の業績アップに繋がる人事評価ですが、
評価内容に対して不満を持つ社員の現状は、実は8割を超えるともいわれています。

その理由には、評価の基準や理由が不透明など、人事評価制度自体の不備によるものも少なくありません。
評価される側の納得感が得られなければ、かえってモチベーションを下げてしまう可能性があります。

このように評価制度は運用を間違うと「もろ刃の剣」になりかねません。
失敗を避けるためには、制度を作る前に評価される側とする側の双方のヒアリングを行い、実態を知ることが大切です。

(2)評価基準と価値観を「見える化」

人事評価は、評価の過程が見える状態になっていないと社員の不満が高まります。
評価基準をブラックボックス化せず、かつ、誰が評価しても同じ結果になる仕組みを作りましょう。

評価項目や評価基準を設定する際には、
まずは自社の優秀な社員をモデルとした理想の姿の可視化から始めてみましょう。

さらに、人事評価は、ある意味で経営者の価値観が「見える化」された基準であるとも言えます。

会社が社員のチームワークを高く評価するのか、それともとにかく売上至上主義なのかは、
経営者の考え方によって異なります。

経営者の考え方が、評価基準に反映されていれば、それに共感する社員が自然と集まり
離職率も低くなるというメリットも生まれるでしょう。

(3)部門別に成果や課題を明確化

部署や部門によって、適切な評価基準を設定することも大切です。

部門別に期待する成果や、与えられた役割、業務遂行に必要となるスキル、抱えている課題などをすべて洗い出し、
整理することから始めましょう。

そのうえで、それぞれの業務に合った基準と項目を設け、
モデルにした優秀社員を物差しにして評価基準を作るのがおすすめです。

(4)「業績」と「バリュー」2つの評価基準を設ける

評価基準を設けるときには、「業績」と「バリュー」の2方向において基準を設けることが重要です。

業績評価

会社の売上や利益にどれだけ貢献したかを測り評価すること

バリュー評価

企業の価値観や行動基準をどれだけ実践できたかを評価すること

業績評価には、MBO、コンピテンシー評価などが活用できますが、
評価項目としては達成度合いだけでなく、必ずプロセスに関しても評価することが大切です。

一方、バリュー評価に関しては、成長した点や業務改善への取り組み、新しいチャレンジやチームの一員として
成果に向けた貢献度、自分の強みや専門性の強化への努力などを評価します。

ただしバリュー評価は業績評価と異なり数値指標を定めにくく、基準があいまいになりがちです。
評価の際は、具体的にどのような行動が評価されたのかを明確にすることが重要です。

(5)誰が評価しても同じ結果になる評価基準

社員評価の仕組みを作るときには、誰が評価しても同じ結果になるように、具体的な評価基準を定めましょう。
その基準を作るのは経営者であり、評価が分かれる場合は経営者の判断を基準にします。

評価は一人に委ねることなく複数人で実施し、目線を合わせたうえで、
評価者全員が一致した評価を下すことが重要です。
そうすることにより、えこひいきなど不平不満の種になるようなことがなくなり、
社員の納得も得られるようになります。

(6)必ず評価のフィードバックを行う

評価を行う際には、何がどう評価され、どう還元されるのかを
社員一人ひとりにしっかりとフィードバックすることも重要です。

フィードバックでは評価結果(評価点)を公開し、自己評価とのギャップについてもていねいに説明しましょう。

評価結果と昇進や昇給、昇格がどのように連動するのかについては明文化しておくのが理想です。
たとえば業績評価はボーナスとして還元されること、バリュー評価は基本給へ反映されることなど、
その関係を明確にして開示しておくのもひとつの手です。

また、評価制度自体と現状に乖離がないかを、都度チェックすることも大切です。
PDCAサイクルを回して、自社に最適な制度に練り上げていきましょう。

まとめ

人事評価を目標管理と混同し、目標を達成したかだけを評価する企業は少なくありません。

しかし人事評価の目的は「人材育成」であり、「人材」という企業の資源を最大限生かし、
事業を成長させるための制度であることを忘れてはなりません。

人事評価に成功し、業績を伸ばしていくには、社員が納得する仕組み作りが大切です。

社員の意見も取り入れたうえで評価基準を作り明確化し、適正な評価を行うようになれば、
それに共感する社員が集まり企業は安定的に発展していきます。

自社独自の適切な人事制度によって、事業の成功に繋がる人事評価をスタートさせましょう。