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離職率を改善する|辞めない人材を獲得する方法

企業の働きやすさを測る指標のひとつに、「離職率」があります。
離職率が低い=良い企業と判断される傾向もあることから、離職率を改善したいと考える企業は少なくありません。

実際に離職率が高い企業は、さまざまな課題を抱えていることが多く、
対策を考えないとやがて大きな問題に発展してしまう可能性もあります。

ここでは、離職率が高くなる原因や、離職率が高いことで引き起こされるデメリット、
離職率を下げるために行うべき改善策などを解説していきます。

目次
  1. 離職率とは?どう計算するの?
  2. 離職率が高くなる原因と会社の特徴
  3. 離職率が高いとどうなる?そのデメリットとは?
  4. 「辞めない人材」こそ優秀な人材
  5. 離職率を下げるために会社がすべき改善策
  6. 辞めない人材の見極め方
  7. まとめ

1. 離職率とは?どう計算するの?

企業の働きやすさの目安として、「離職率」を気にする労働者は少なくありません。
厚生労働省では離職率を、「常用労働者数(※)に対する離職者の割合」と定義しており、
1月1日現在の常用労働者数と前年1月~12月の1年間の離職者数によって、以下のように離職率を割り出しています。

※常用労働者・・・期間を定めずに雇われている者、もしくは1カ月以上の期間を定めて雇われている者

※離職率=前年1~12月の離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100%(年齢階級別に関しては、6月末日現在の常用労働者数)

たとえば、前年の離職者数が3名で、翌年1月1日の常用労働者数が100名だった場合は下記のようになります。

離職率=3(名)÷100(名)= 0.03×100%=3%

この計算で、離職率は「3%」と算出されます。

ただし離職率は、「ある時点で在籍していた労働者のうち、一定の期間を経て退職した人の割合」を指すのが
一般的で、明確な定義はありません。

企業においては期首から期末までの1年間の退職者を算出するケースも多く、
入社後1年間や3年間などの期間で離職率を出すこともあります。

離職率を見るときには、分母と分子になにを用いて算出しているのかを確認することが大切です。

2. 離職率が高くなる原因と会社の特徴

ここからは、離職率が高くなる原因を、
厚生労働省の「(令和元年)雇用動向調査結果」のデータから探ってみましょう。

同調査によると、令和元年の常用雇用者の平均離職率は15.6%でした。
男女別に見ると男性が13.4%であるのに対し、女性が18.2%と高くなっています。
また常用労働者のうち一般労働者は11.4%ですが、
パートタイム労働者は26.4%と、離職率が4人に1人もの高い割合になっていることがわかります。

転職による入職者に前職を辞めた理由については、
「(出向などを含む)その他の理由」と「定年・契約期間の満了」「会社都合」をのぞいた
上位5つの理由は以下のとおりです。

転職入職者が前職を辞めた理由
◀ 表は左右にスクロールできます ▶
男性女性
1労働時間、休日などの労働条件が悪かった職場の人間関係が好ましくなかった
2職場の人間関係が好ましくなかった労働時間、休日などの労働条件が悪かった
3給料など収入が少なかった給料など収入が少なかった
4会社の将来が不安だった仕事の内容に興味を持てなかった
5能力・個性・資格を生かせなかった会社の将来が不安だった

順番は入れ替わるものの、男女ともに上位3つの理由が共通していることが読み取れます。

働き方改革が進むなか、ワークライフバランスが見直されるようになり、
仕事よりもプライベートを大切にしたいと考える人が増えてきました。
とくに若い世代はこの傾向が顕著で、上記の調査においても、
「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」ことを離職理由として挙げる割合は、20代に多く見られています。

と同時に、「給料など収入が少なかった」と収入面への不満も多く、プライベートを充実させたいものの、
一定の収入があることも重要と考える人が多いことが読み取れます。

また「職場の人間関係が好ましくなかった」ことが退職の原因である人も少なくありません。
とくに女性では約15%もの人が退職理由に挙げています。

1日の3分の1以上の時間を過ごす職場において、
働くモチベーションに人間関係が大きな影響を与えることがわかります。

毎日顔をあわせる上司や同僚とうまくいかないと大きなストレスを抱えることになり、
離職に繋がってしまうのでしょう。

一方「仕事の内容に興味を持てなかった」「能力・個性・資格を活かせなかった」といった理由で
退職した人からは、理想と現実の仕事内容のギャップがあったことがうかがえます。

労働者が退職を決意する理由を見れば、離職率が高くなる会社の特徴が見えてきて、
改善ポイントもわかるのではないでしょうか。

それでは離職率が高くなると、企業にはどのようなデメリットがあるのかを見てみましょう。

3. 離職率が高いとどうなる?そのデメリットとは?

従業員の離職率が高いことで企業に生じる問題やデメリットとしては、以下のような内容が挙げられます。

  • 人材不足による機会損失
  • 知識・スキルやノウハウの喪失
  • 採用・育成コストの損失
  • 生産性の低下
  • チームワーク・士気の低下
  • 顧客・取引先からの信用低下
  • (残った社員の)労働時間の増大

それぞれ詳しく解説していきます。

(1)人材不足による機会損失

従業員の離職率が高くなることでもっとも問題となるのは、人材不足に陥り機会損失が生じることです。
離職者が出ても、すぐに同じレベルの人材を採用できれば問題ありませんが、なかなかそうはいきません。
人材が育つまでは受注数を減らす、営業先を絞るなどする必要が出てくる可能性があります。

また、新しいアイデアはあるが、人材不足のため挑戦できないという状況も起こりえます。
新人が穴埋めできるようになるまでに、本来得られたはずの売上など「機会損失」によるロスが生じてしまうのです。

とくに離職した人材の職歴が長く、業務の中心であった場合には、機会損失のダメージは大きなものとなるでしょう。

(2)知識・スキルやノウハウの喪失

従業員が離職することにより、知識やスキル、ノウハウも失ってしまうことも少なくありません。

とくに中小企業においては、仕事が人につく、いわゆる「属人化」が起こりやすいといわれています。
「〇〇のことならあの人に聞け」と、その業務に精通している人がいると、仕事は一見スムーズに進みます。
しかしその人が離職すると、知識とスキル、ノウハウも一緒に失ってしまうのです。
営業職では、優秀な人材の離職とともに取引先まで離れてしまうことすら考えられます。

(3)採用・育成コストの損失

離職率が高いと、採用・育成コストが増大することも問題です。

社員が離職すると、その都度補充人員を確保するために採用活動を行う必要があり、コストが発生します。

採用コストには、求人広告費のような目に見える費用だけではなく、
人事担当者や採用した人材の育成にあたる社員たちの労働力や人件費といった見えないコストも発生します。

離職率が高いまま改善しないでいると、
採用・育成コストが永遠にかかり続けることは認識しておく必要があるでしょう。

(4)生産性の低下

離職者が出るたびに、業務の生産性が低下することもデメリットです。
人材不足により業務がうまく回らなくなり、作業量を落とさざるを得なくなるためです。

さらに新しい人材を採用しても、その人材が会社の「戦力」となるまでは、
先輩社員も教育のための時間を取ることになるため、仕事の効率は低下してしまいます。

(5)チームワーク・士気の低下

離職率が高いと、チームワークや社員の士気が低下することも問題です。

まず、離職者の穴埋めのために残された従業員の仕事量が増え、ストレスが増大していきます。
さらに離職理由によっては残された従業員が、会社に対して不信感を抱くことも考えられます。
従業員の間で不満が蓄積されていくと、さらなる離職者を生む可能性が高まる危険性があるのです。

そもそも離職率が高く人の入れ替わりが多ければ、チームワークが育ちません。
職場の士気の低下は、金銭的なロスよりもより大きな問題となりがちなため、十分な配慮が必要です。

(6)顧客・取引先からの信用低下

離職者が多い企業は、顧客や取引先からの信用低下を招くこともデメリットです。

企業においては、担当者間のコミュニケーションが円滑であればあるほどいい関係が構築され、
取引がスムーズに進みます。

しかし取引先の担当者が頻繁に入れ替わるようだと、信頼関係どころか、
業務が引き継がれていないといった直接的なトラブルも発生しやすくなります。

また顧客にとって、そのような状況では契約や取引を続ける気持ちになれなくなってしまうでしょう。

(7)(残った社員の)労働時間の増大

離職者が増えると、残った社員への負担が大きくなることも問題のひとつです。
人が減ったぶん仕事量も減れば問題ないのですが、実際は、残った社員に
「新しい人が入るまで」との名目で、「業務を振り分ける」ことがほとんどです。

労働時間が増えると、残業コストが膨らむと同時に、従業員が疲弊し不満が蓄積されていきます。
ここでさらに上層部が「人が減っても仕事が回る」と勘違いしてしまうと、
ストレスに耐えきれなくなった従業員がさらに退職するという悪循環に陥ってしまうのです。

4. 「辞めない人材」こそ優秀な人材

前章で挙げたデメリットは、
離職したのがこれまで高い業績を上げていた「優秀な人材」であればあるほど損失が大きくなります。

しかし、どの企業でも優秀な人材はごく一部であるはずです。

もともと母数が少ないごく少数に対してだけ大きな期待をかけ、
業務を依存している状態自体が健全な企業運営とはいえません。

人手不足が慢性化している現代においては、平均的な業績の社員を長期間企業にとどめ、
知識やノウハウを積み上げていってもらうことが重要です。

人こそが会社の資産であると理解し、見えない財産を生み出していくことに意識を向けましょう。

また、「会社を辞めずに長くとどまる人材」は、
自社の社風や働き方にうまく適合した「自社をよく知る人材」であるともいえます。
どれだけ優秀な人であっても、自社をよく理解していない人は、人材として優秀とはいえないのです。

このように考えると、企業にとっての「優秀な人材」というのは、「辞めない人材」であることがわかります。
自社をよく知り長く働き続ける人こそが、長期間にわたって会社に利益や強みをもたらす優秀な人材そのものなのです。

5. 離職率を下げるために会社がすべき改善策

離職率が高いとさまざまなデメリットがあり、
優秀な人材、つまり「辞めない人材」を育てることが企業の命題とわかりました。
それでは離職率を下げるために、会社ではどのようなことができるのでしょうか。

離職率が高い場合、まずは「問題は会社にある」と捉える必要があります。
労働者のライフスタイルや仕事に対しての考え方が、時代とともに変化してきていることは事実です。
そこに離職の原因があるとしても、その変化に会社が対応しきれていないことが問題なのです。

そのため離職率を下げるためには、「退職理由」に焦点を当て、会社が改善すべき点を洗い出すことから始めます。
辞めたくなる「本当の理由」を知り、離職状況を客観的に「見える化」すれば、対策を立てられるようになるでしょう。

また、社員は会社に残る「メリット(意義)」がひとつでもあれば、「離職トリガー」は引かないといわれています。

たとえば、看護師の離職に悩むとある医療機関では、業務の性質上、労働時間の改善が難しく、
離職率の高さは長時間労働に対する不満が原因であると考えていました。
しかし実際に、在職および退職後の看護師にヒアリングを行ってみると、
多くの看護師が「もっとスペシャリストとして成長したい」という不満を持っていることがわかりました。
企業側の予想と現状の離職理由は違っていたのです。

そこでその医療機関では、離職率を下げるために資格取得支援制度や勉強会といった福利厚生を充実させました。
その結果、高止まりしていた離職率を大幅に低下させることに成功したのです。

このように、「会社が想像する理由」と「実際の退職理由」がかけ離れているケースは少なくありません。
社員が離職する本当の理由を見える化し、そこを改善することで、
社員に「残るメリット」を感じてもらいさえすれば、離職率の低下を実現できるでしょう。

6. 辞めない人材の見極め方

辞めずに長く働き続ける優秀な人材となる人を見極めるときには、大前提として、
「会社の理念や方針に共感できる人か」を確認することが大切です。
企業理念や方針といった会社の「柱」となる部分が、人間の芯となる「価値観」と調和できなければ、
会社に居心地の良さを感じることはないでしょう。

辞めない人材を見極めるには、採用面接や人事面接において、
「カジュアルな会話」と「漠然とした質問」でコミュニケーション能力と人間性を見るのが効果的です。

面接においては、つい仕事に対する能力やスキルを知りたいあまり、そういった質問に偏りがちです。
しかし「辞めない」ことを重視するのであれば、人間性にも着目すべきといえます。

たとえば面接時に、まずはカジュアルな話題のコミュニケーションから始めたり、
好きなことや苦手なことなど、業務とは関係のない会話もしてみるとよいでしょう。
多くの人は面接でそのような質問があると予期していないため、その人の素の姿に触れることが可能です。

また、長く勤める優秀な人材に必要な「粘り強さ」が備わっているかを確認するためには、
「成功体験」を聞くのが有効です。

その際には、「目標達成(成功)のために努力したこと」と「工夫したこと」の2つの質問を行います。

困難に直面したとき、どのように対処するのかが把握できれば、
実際なにか問題が発生した際に、どう動くかが予測できます。

まとめ

離職率が高くなると、機会損失や知識・ノウハウの喪失、生産性の低下などさまざまなデメリットが発生します。
ひとつでも会社で働く意義を見いだせれば、早期離職を防ぐ一助とすることはできます。
しかしそれだけでは、人材は定着しないのが現実です。

人材を定着させるには、離職の「本当の理由」を知ること、
そして「離職理由の事実に対して複数の人材施策を実施すること」が大切です。